会話と​沈黙の​中に、​本物の​言葉が​眠っている

「インタビューが​お上手ですね」と、​お客さまから​言っていただく​ことがあります。
ありがたい​言葉なのですが、​自分たちで​仕事を​振り​返ってみると、​私たちが​特別な​ことを​している​自覚は、​あまり​ありません。

ただ、​他社さんと​違うかもしれない、と​感じる​ことが​二つあります。
ひとつは、​自然な​会話の​中で​言葉を​引き出す​こと。
もう​ひとつは、​「待つ」ことです。

1. 用意された​言葉では、​心は​動かない

インタビューと​いうと、​質問表を​用意して、​ひと​つずつ​聞いていく​形を​思い浮かべる​方が​多いかもしれません。
でも​私たちは、​決まった​質問を​順番に​投げる​ことはしません。
雑談のような​話から​始めて、​相手の​話に​あいづちを​打ち、​気に​なった​ところを​もう​少し​聞いてみる。
その​繰り返しの​中で、​話が​少し​ずつ​深い​ところへ​進んでいきます。

質問表どおりに​聞かれると、​人は​「答え」を​用意します。
用意された​答えは、​整っていて、​わかりやすい。
でも、​用意された​言葉では、​聞いている​人の​心は​動きません。

自然な​会話の​中では、​話している​本人も、​次に​何を​話すかを​決めていません。
だからこそ、​思っても​みなかった​記憶や、​ずっと​言葉に​していなかった​想いが、​ふと​出てきます。
採用映像の​核に​なるのは、​こうして​会話の​中から​生まれた​言葉です。

2. 「うまく​話せる​人」ほど、​本物の​言葉は​遠くに​ある

不思議な​ことに、​最初から​スラスラと​話せる​経営者の​方ほど、​私たちは​慎重に​なります。
スラスラ話せると​いう​ことは、​その​人の​頭の​中に、​すでに​整理された​「対外用の​言葉」が​あると​いう​ことです。
営業の​場で、​講演で、​社員に​話す場面で、​何度も​繰り返してきた​言葉。

その​言葉は​嘘ではありません。
でも、​たぶん​その​人に​とっての​一番奥に​ある​言葉でもありません。
一番奥に​ある​ものは、​たいてい、​まだ​整理されていません。
だから​言葉に​しようと​すると​詰まる。​言いかけて​言い直す。
「えっと、​なんて​いうか……」と​探す。

採用映像の​核に​なる​言葉は、​こちら側に​眠っています。
だから、​スムーズに​進むインタビューほど、​私たちは​あえて​話を​少し​寄り道させて、​会話の​流れの​中で、​もう​一段奥へ​降りていく​きっかけを​つくります。

3. 会話の​中に​生まれる、​3秒の​沈黙

自然な​会話を​続けていると、​経営者の​方が​何かを​語った​あと、​ふっと​言葉が​途切れる​瞬間が​あります。
視線が​宙を​泳ぐ。​少し​首を​かしげる。​あるいは、​何かを​言いかけて、​止まる。
この​沈黙が、​おそらく​3秒くらい​続きます。

この​3秒の​間に、​何が​起きているか。
経営者の​方は、​もう​少し​奥に​ある​ものを​取りに​行こうと​しています。
整理された​言葉ではなく、​まだ​言葉に​なっていない​感覚に、​自分​自身で​触れに​行こうと​している。

ここで​私たちが​何か気の​利いた​質問を​挟んでしまうと、​その​手は​ぱっと​引っ込んでしまいます。
「ああ、​別の​話に​進むのね」と、​相手の​意識が​表面に​戻ってしまう。
だから、​待ちます。

話を​聞く​ことに​慣れていないと、​沈黙を​「気まずさ」と​して​受け取りがちです。
経営者が​言葉に​詰まる​→何か​言わないと​→次の​質問へ​→また​別の​話題が​始まる。
これを​繰り返していくと、​表面の​話だけが​滑らかに​進んで、​肝心な​部分には​触れないまま​インタビューが​終わります。

沈黙は、気まずさではない。
経営者が、自分の中の何かを取り出そうとしている、貴重な瞬間。

4. だから、​時間が​かかる

自然な​会話で​引き出し、​沈黙を​待つ。
そうすると、​インタビューには​どうしても​時間が​かかります。
本題とは​関係なさそうな​話を​している​時間も、​相手が​言葉を​探している​時間も、​すべて​必要な​時間です。
用意された​言葉ではなく、​その​場で​生まれる​言葉を​待っているからです。

効率よく​聞こうと​すれば、​もっと​短く​できます。
でも​そうすると、​出てくるのは​「いつもの​言葉」だけに​なります。
私たちが​初回ヒアリングに​まとまった​お時間を​いただくのは、​その​ためです。

あわせて、​こちらが​「次の​質問を​急が​ない」と​決めて​おく​こと。
次に​何を​聞こうかと​考えながら​聞いている​聞き手は、​相手の​話に​乗れず、​沈黙も​待てません。
あらかじめ大筋の​流れだけ​持って、​目の前の​言葉に​集中する。

そして​何より、​聞き手自身が​「この​人の​話を、もっと​知りたい」と​思っている​こと。
これは​技術ではなく、​姿勢の​話です。

5. 良い​インタビューの​後に​起きる​こと

会話を​重ねて、​待って、​ようやく​出てきた​言葉。
整理されていない、​つたない、でも​本物の​言葉。
そういう​言葉が​出てきた​インタビューの​後、​経営者の​方が​同じ​感想を​口に​する​ことが​多いです。

「こんな​話、​誰にもした​ことがなかったな」

そう​言って​もらえた​とき、​私たちは​「ああ、​今日の​インタビューは、​ちゃんと​できたな」と​感じます。
新しい​ことを​引き出したのではなく、​その​人の​中に​ずっと​あった​ものに、​一緒に​触れさせて​もらったと​いう​感覚です。

まとめ:聴くとは​相手の​ための​時間を​創る​こと

採用ブランディングの​現場で、​私たちが​いちばん​大切に​しているのは、​撮影技術でも​編集スキルでもなく、​「聴く​こと」です。
そして​聴くとは、​ただ​黙ってうな​ずく​ことではありません。
自然な​会話の​中で、​相手が​自分の​奥に​降りていく​時間を、​急かさずに​守る​こと。

これは、​特別な​技術ではありません。
でも、​これを​やれる​時間と​姿勢を​確保する​ことが、​結果と​して、​その​会社に​しかない​言葉、​つまり​「世界観」の​根っこを​引き出せるか​どうかを​決めています。