ある経営者の方から、こんな言葉を聞いたことがあります。
「前に制作会社に頼んで、きれいな動画ができたんです。でも、採用が何も変わらなかった」と。
映像の品質は悪くなかった。撮影も丁寧だった。それでも、何も機能しなかった。
同じような経験をお持ちの経営者の方に、私たちはこれまで何人もお会いしてきました。
その度に感じるのは、問題は映像の出来ではなく、もっと手前にある、ということです。
1. 「何を伝えるか」が決まらないまま撮り始める問題
採用動画の制作が始まると、話はすぐに「どんな映像にするか」「誰を出演させるか」「雰囲気はどうするか」という方向へ進んでいきます。
でも実は、その前に答えておかなければならない問いがあります。
「この動画を見た人に、何を感じてほしいのか」
料理にたとえると、食材が何かわからないまま調理を始めるようなものです。
どんなに腕のいい料理人でも、素材が定義されていなければ創れない。
採用動画も同じで、「伝えるべき中身」が整理されていない状態で創ると、きれいだけれど何も残らない映像ができあがります。
2. 「素材」とは何か
私たちが「素材」と呼んでいるのは、会社の理念や、創業のきっかけ、大切にしてきた判断の積み重ね、どんな人と働きたいかという考え方── そういったものを言語化したものです。
「うちの会社にはそんなに語れるものがない」という声も、よく聞きます。
でも、私たちの経験上、語れる理念がない会社はありません。
あるのは、まだ語られていない理念だけです。
実際にじっくりインタビューをしてみると、経営者の方が「こんなこと、改めて言葉にしたのは初めてです」とおっしゃる瞬間があります。
創業当時に乗り越えた苦境、手放せなかった信念、支えてくれたスタッフへの感謝。
そういった記憶の中に、その会社にしか言えないことが必ずあります。
3. 素材があれば、映像は「機能する道具」になる
素材が言語化されると、映像の設計が変わります。
出演者が話す言葉に迷いがなくなる。
どんな場面を撮るかが自然に決まる。
見た人が「この会社、なんかいいな」と感じる何かが、映像の中に宿るようになる。
求職者の情報収集のあり方も、年々変わっています。
アイデムの調査(2025年1月公表)では、求人に応募した人の41.6%が、応募前に企業のホームページを探していました。
エン・ジャパンの調査(2025年5月公表)でも、転職活動中の人の約7割が「採用動画は応募前に見たい」と答えています。
ホームページや採用動画は、まさにその情報収集の場面で目にされるものです。
条件だけで比較している段階の人が、「ここの会社、他と何かが違う」と感じて足を止めてくれる。
そのきっかけになれるかどうかが、素材の有無で変わります。
4. 素材は私たちだけのものではない
もう一つ、伝えておきたいことがあります。
私たちはこの「素材」を、本質的魅力シートという言葉の設計書にまとめています。
シートの利用権は、クライアントである会社に帰属します。
採用動画のためだけに創るのではなく、採用ページのコピーにも、求人票の文章にも、社内での理念共有にも使えます。
だから「映像制作はまだ少し先でいい」という場合でも、素材だけ先に整理しておくことに意味があります。
素材を持った会社は、どこに発注しても機能するものが創れます。
素材を持たない会社は、何度創っても同じ問いの前に立ち返ります。
まとめ:映像を創る前に確認したい2つのこと
私たちが制作に入る前に必ず確認するのは、この2点です。
- 「なぜ自社が選ばれていないか」について、何らかの仮説があるか
- 「なぜここで働くのか」という理由が、言葉になっているか
この2つが揃っていれば、映像はぐっと機能する道具に近づきます。
まだ揃っていない場合は、動画を創る前に一度整理する機会を持つことをおすすめします。
「動画を検討しているけれど、そもそも何を伝えればいいかわからない」という段階でもご相談いただけます。