「採用動画を創りたい」とご相談いただくとき、私たちはお見積もりやスケジュールの話より先に、ひとつ確認させていただくことがあります。
「いま、この3つは揃っていますか?」
社内に3つの揃え物がない状態で撮影に進むと、どれだけ丁寧に制作しても効果が出にくくなります。
逆に言えば、この3つが揃っていれば、映像は機能する道具になりやすくなります。
1. 「誰に届けたいか」がひとりに絞れていること
採用動画の制作で最初によくつまずくのが、「誰に届けたい動画なのか」が決まらないまま撮影が始まることです。
「新卒も中途も」「20代も30代も」「事務職も現場も」、すべてに届く動画を創ろうとすると、結局誰の心にも残らない動画になります。
私たちが最初にお願いするのは、ひとりの具体的な人物を思い浮かべてもらうことです。
「うちの会社に去年入った、あのスタッフ」「3年前に応募してきて、惜しくも辞退になったあの人」「いま採れたら一番嬉しい人」── そんなふうに、実在する一人を思い浮かべると、急に動画の中身が決まります。
エン・ジャパンが2025年に転職活動中の人を対象に行った調査では、42%が「採用動画は志望度に影響する」と答え、約7割が「応募前に見たい」と回答しています。
興味深いのは、志望度が上がる内容の上位(仕事紹介・1日の流れ・会社や事業の紹介)が、そのまま志望度が下がる内容の上位でもあることです。
同じ内容でも、誰に向けて、どう見せるかで、結果は正反対になる。
誰に向けてかわからない動画は、誰の志望度も上げません。
2. 「社長と現場の温度差」が、社内で対話されていること
これは意外な落とし穴です。社長は「想いを伝える動画にしたい」と言う。でも採用担当の現場は「とにかく応募数を増やしたい」と言う。
撮影現場で初めて、この温度差が露呈することがあります。
この温度差は、悪いものではありません。
むしろ、どちらの視点も採用には不可欠です。
問題は、それが整理されないまま動画制作が進むこと。
撮影の前に、関わる人たちの間で「この動画は何を達成するためのものか」を、一度言葉にしておく。
社長は何を込めたいか、担当者は何を達成したいか、現場の社員はどう協力するか。30分でいいので、その対話を持っておいてください。
撮影現場での迷いがなくなりますし、編集の方向性で悩む時間も大きく減ります。
3. 「撮ったあとの活用先」が社内で見えていること
3つ目が、実はいちばん見落とされがちです。
「とりあえず動画を創っておけば、どこかで使えるはず」── この発想で発注すると、「撮ったあと、使われない動画」になりがちです。
動画は、撮ってからのほうがずっと長い時間を生きるもの。
発注前に、最低でも次の3か所くらいの活用シーンを決めておいてください。
- 採用ホームページのどこに、どんな長さで埋め込むか
- 求人媒体(Indeed・Wantedlyなど)のどの位置で使うか
- 会社説明会と面接の場で、どう見せるか
たとえば、「会社説明会の冒頭3分」と「採用ホームページのファーストビュー」では、求められる長さも、見せたい中身も違います。
発注の段階で活用シーンが決まっていれば、撮影の構成も自然と決まる。
撮影本数も、編集の本数も、賢く設計できます。
なぜこの「3つ」が大切か
採用動画は、安いものではありません。
数十万円から、内容によっては百万円を超える投資です。
その投資を活かすかどうかは、撮影前の30分の対話で、ほとんど決まっています。
映像のクオリティそのものではなく、「誰に・何を・どこで届けるか」の合意があるかどうか。
それを揃える時間が、結果としていちばん大きなリターンを生みます。
まとめ
私たちが初回の対話に1〜2時間ほどお時間をいただいているのは、この3つを一緒に整理するためです。
「動画を創るかどうか、まだ迷っている」という段階でも、この対話だけ持ってみると、その後の判断が動きます。