「採用は、人事の仕事」――そう考えている会社ほど、採用が思うようにいかないことが多いものです。
採用を人事のタスクとして扱った瞬間、それは「欠員を埋める作業」に矮小化されます。誰かが辞めた、だから補充する。人が足りない、だから募集する。
この発想で動いているかぎり、採用は永遠に「穴埋め」のままです。
でも、本当の採用は、まったく違う性質を持っています。
採用とは、「これからどんな会社になりたいか」を決める、経営そのものの判断です。
1. 「誰を入れるか」は、「どんな会社になるか」と同じこと
会社は、人の集合体です。当たり前のことですが、これが本質です。
ということは、新しく誰を入れるかは、会社がこれからどんな集団になっていくかを決めることと、まったく同じ意味を持ちます。
価値観の合う人を入れれば、文化はより濃くなる。
スキルだけで人を入れれば、文化は薄まる。
妥協して人を入れれば、その妥協が組織全体に静かに広がっていく。
一人の採用は、一人分の労働力を足す話ではありません。
会社の未来の縮図を、一つ加える話です。これを人事の作業として下に降ろしてしまうと、会社の未来が、現場の欠員補充の都合で決まっていくことになります。
2. 社長が採用から手を引くと何が起きるか
成長期の会社でよく見られるのが、社長が「採用は任せた」と現場に丸投げするパターンです。
気持ちは分かります。社長は忙しい。事業のことで頭がいっぱい。
採用は人事や現場リーダーに任せて、自分は前を向きたい。
でも、社長が採用から手を引いた瞬間に、採用は「会社の未来を創る活動」から「現場の人手不足を解消する活動」に変わります。
現場は、目の前の業務を回すために人が欲しい。
だから「すぐ働ける人」「とりあえず手が足りる人」を優先します。
会社が3年後どうありたいか、という視点は、現場の採用判断には入ってきません。
結果として、短期的には人手が埋まっても、長期的には文化が薄まり、ミスマッチが増え、離職が増える。社長が採用から手を引くと、このループに入ります。
3. 経営判断としての採用は「言葉」から始まる
採用を経営判断として扱うとは、具体的にどういうことか。
それは、「うちの会社は、どこに向かうのか」「そのために、どんな人と歩みたいのか」を、経営者自身が言葉にすることから始まります。
この言葉がない状態で採用活動を始めると、求人票も、面接基準も、すべてが場当たり的になります。逆に、この言葉があれば、求人票の一行も、面接で何を聞くかも、すべてがそこから逆算できます。
採用ブランディングという仕事の核心は、まさにここにあります。
私たちが最初に経営者の方とじっくり対話するのは、「採用の前提となる経営判断」を、言葉として固めるためです。
そして、言葉が固まったら、次は「誰に、何を、どの順番で、どこへ届けるか」。
現在地とゴールを確かめ、成果が出るまでの道筋(ロードマップ)を描くところまでが、採用を経営判断として扱うということです。
まとめ:採用を経営の中心に戻す
採用がうまくいかないと感じたとき、まず問い直してほしいことがあります。
「採用を、人事や現場の作業として、下に降ろしていないか」
採用は、会社の未来を決める経営判断です。
だから、経営者自身が関わり続ける必要があります。
少なくとも、「どんな人と、どこへ向かうか」という言葉だけは、経営者が握っておくべきです。
その言葉を一緒に固め、成果が出るまでの道筋を描くところから、私たちはお手伝いできます。
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